妊娠中の骨盤底筋トレーニングと呼吸法
要点: 骨盤底筋体操は、おしっこを止めるときに使う筋肉を3〜5秒締めて、同じ長さかけてゆるめる運動です。1日3セット×10回で足り、全部で5分ほど。変化を感じるのはたいてい4〜6週間後です。呼吸法の原則はひとつだけ、吐く時間を吸う時間より長くすること。妊娠中は息を止める必要はありません。以下で両方を順に説明します。
妊娠中の運動というと、散歩やマタニティヨガが思い浮かびます。でも、お産と産後にいちばん直接つながる2つは、もっと静かなものです。骨盤底筋体操と呼吸法。どちらも道具が要らず、1日5分もかからず、電車の中でも順番待ちのあいだでもできます。
この記事では、どの筋肉を使うのか、何回やるのか、よくある間違い、そしてお産で使う呼吸を順に説明します。始める前にひとつだけ。経過が順調な妊娠では一般に安全とされていますが、切迫早産、子宮頸管縫縮術、前置胎盤、安静の指示がある場合は、必ず主治医の許可を得てから始めてください。
骨盤底筋とは何か
骨盤底筋は、骨盤の底をハンモックのようにふさいでいる筋肉の集まりです。膀胱、子宮、腸を下から支え、排尿と排便のコントロールをしています。
妊娠中、この筋肉は二方向から負担を受けます。ひとつは大きくなっていく子宮の重さ、もうひとつはホルモンの影響で靭帯や結合組織がゆるむこと。その結果として、多くの妊婦さんが経験することが起きます——くしゃみをしたとき、笑ったとき、咳をしたときに、少し漏れる。
続けて鍛えた骨盤底筋は、
- 妊娠中と産後の、くしゃみや咳による尿もれを減らします
- 産後の回復を助けます
- お産のときに、この筋肉を意識的にゆるめられるようになります。これは締められることと同じくらい大事です
最後の項目は、よく飛ばされます。骨盤底筋体操は「締める」だけの運動ではありません。必要なときに完全にゆるめられることも、運動の一部です。
骨盤底筋体操のやり方
1. 使う筋肉を見つける
いちばん知られている方法は、おしっこを途中で止めるときの筋肉を思い浮かべることです。そこが骨盤底筋です。場所を確かめるために一度試すだけにしてください。 排尿の途中で止めることを習慣にするのは、膀胱にとってよくありません。
別の言い方をすると、おならを我慢するときに使う筋肉を、上へ、内側へ引き上げる感じです。
2. 楽な姿勢をとる
はじめは仰向けか横向きで寝た姿勢のほうが、筋肉を感じやすいです。慣れてきたら座ったまま、立ったままでもできます。妊娠中期以降は長く仰向けでいることが勧められないので、横向きか座った姿勢のほうが向いています。
3. 締めて、たもって、ゆるめる
- 骨盤底を上へ、内側へ引き上げます
- 3〜5秒たもちます
- 同じ長さかけて、完全にゆるめます
- 息は止めません。ふつうに吸って吐き続けてください
4. 1セットを終える
10回で1セット。1日3セット。 全部で5分もかかりません。
よくある4つの間違い
| 間違い | なぜよくないか | どうするか |
|---|---|---|
| おなかやおしりも一緒に締めている | 力が骨盤底以外の筋肉に逃げます | おなかに手を当てる。おなかは柔らかいままに |
| 息を止めている | おなかの中の圧力が上がり、逆効果になります | 締めているあいだも呼吸を続ける |
| ゆるめる時間を飛ばしている | 筋肉が疲れて、ゆるめる力が落ちます | ゆるめる時間を、締める時間と同じだけとる |
| やりすぎている | 多いほどよい、ではありません | 1日3セットで十分 |
変化を感じるようになるのは、たいてい4〜6週間続けたあとです。1週間やってやめてしまうのは、やらなかったのとあまり変わりません。
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妊娠中の呼吸法
呼吸法には2つの役割があります。妊娠期間中の緊張や不安をやわらげることと、お産で陣痛を受け止めること。求められるものが少し違います。
腹式呼吸——すべての土台
ほかの方法はすべてここから始まります。
- 片手を胸に、もう片方の手をおなかに置きます
- 鼻からゆっくり吸います。動くのは、おなかに置いた手のほうです
- 口から、吸ったときより長い時間かけて吐きます
- 5〜10回くり返します
胸に置いた手のほうがはっきり動いているなら、浅い胸の呼吸になっています。腹式に切り替えるには何度か練習が要ります。
妊娠中は息を止めなくてよい
よく紹介される呼吸法の多く(4-7-8、箱呼吸)には、息を止める時間が入っています。妊娠中にこの部分は必要ありませんし、勧められません。長く息を止めるとおなかの中の圧力が上がり、血圧が揺れたり、めまいが出たりすることがあります。そもそも落ち着く効果をつくっているのは、止めることではなくゆっくり吐くことのほうです。
そこで、次の2つは止める時間なしの形にしてあります。落ち着く効果はそのまま得られます。
4-8呼吸——眠るときと、不安なときに
- 4秒、鼻から吸う
- 8秒、口からゆっくり吐く
- 4〜6回くり返す
ルールはひとつ、吐く時間を吸う時間より長くすることだけです。数が苦しければ3-6でも4-6でも構いません。大事なのは長さではなく、吐くほうが長いことです。
波の呼吸——日中に落ち着きたいとき
吸う(4)——吐く(6)——自然な短い間——くり返す。順番待ちのあいだ、診察の前、夜中に目が覚めたとき。数えやすくて、息を止めなくてよいので使いやすい形です。
どちらの方法でも、めまい、しびれ、胸の詰まる感じが出たら、すぐにやめてふつうの呼吸に戻してください。その方法が合っていないというサインです。無理をせず、次の健診で伝えてください。
お産で使う呼吸
陣痛のあいだにやることは、痛みを乗り越えることではなく、痛みと一緒に進むことです。
- 陣痛が始まったところで、ひとつ深い呼吸をします(深く吸って、長く吐く)
- 陣痛のあいだはゆっくり深く呼吸を続けます。吐くほうを長く
- 陣痛が終わったら、もうひとつ深い呼吸をします
日本の両親学級では、ラマーズ法の「ヒッ、ヒッ、フー」や、長く吐くことを中心にしたソフロロジー式が教えられることが多いです。名前は違っても、どれも「吐くことに意識を向ける」という点は共通しています。自分に合うものを、両親学級で実際に試してみてください。
いきむ場面では、長く息を止めて力むより、短く吐きながら押すほうが勧められることが多いです。ただしここは、そのときの助産師と医師の声かけに従うのがいちばんです。子宮口が全部開くまでの「いきみ逃し」も、両親学級で練習しておくと、当日ずいぶん違います。
8週間の練習プラン
ゼロから始める方向けの、少しずつ積み上げる形です。前の週の上に足していきます。
| 週 | 骨盤底筋 | 呼吸 |
|---|---|---|
| 1〜2週目 | 1日2セット×10回、3秒たもつ | 1日1回、腹式呼吸を5回 |
| 3〜4週目 | 1日3セット×10回、3秒たもつ | 腹式呼吸を10回+寝る前に4-8呼吸 |
| 5〜6週目 | 1日3セット×10回、5秒たもつ | 朝晩に4-8呼吸+日中に波の呼吸 |
| 7〜8週目 | 1日3セット×10回+速い締め10回 | 陣痛の練習:60秒間ゆっくり呼吸を続ける |
最後の「陣痛の練習」は、お産の準備として役に立ちます。タイマーを60秒にして、そのあいだゆっくり呼吸を続けるだけです。実際の陣痛の長さに体を慣らせます。
続かないという方は、いまある習慣にくっつけてみてください。歯をみがきながら1セット、布団に入ったら4-8呼吸。新しい時間をつくるより、ずっと楽です。
Baby Wallieの週ごとのAIプログラムも、この2つを妊娠週数に合わせて組み立てて通知します。詳しくは妊娠管理のページにあります。ただしアプリの表示言語は英語とトルコ語のみで、日本語の画面はありません。日本語で読めるのはこのサイトの記事と、Wallie AIの返答です。
産後はいつから再開するか
経腟分娩のあとは、痛みがなければ数日のうちから軽く始められることが多いです。帝王切開のあと、会陰切開や裂傷があった場合は、主治医の許可を待ってください。
産後の最初の数週間の目標は、しっかり鍛えることではなく、筋肉をもう一度目覚めさせることです。短くたもつ、回数は少なく、痛みのない範囲で。産後1か月健診のときに、状態を医師に見てもらってください。
相談したほうがよいとき
- 続けているのに、6〜8週間たっても尿もれが変わらない
- 体操のときに痛みがある
- どうしても使う筋肉が分からない
- 骨盤のあたりに、下がってくるような重さや圧迫感がある
- 性交時に痛みがある
こうしたときには、骨盤底筋の理学療法が有効なことがあります。妊婦健診や産後1か月健診で相談して、対応している施設を紹介してもらってください。日本ではまだ受けられる場所が多くありませんが、産婦人科、泌尿器科、女性外来のある施設で扱っていることがあります。
あわせて読むもの
妊娠中の食事、睡眠、運動がどう支え合っているかは妊娠中の食事と週数ごとの妊娠ガイドにまとめてあります。いま何週なのか、予定日がいつなのかは妊娠週数の数え方と出産予定日の計算で確かめられます。妊娠と育児の記事はガイドからまとめて読めます。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師の診察に代わるものではありません。運動を始める前に、かかりつけの産婦人科に相談してください。
よくある質問
骨盤底筋体操は1日に何回すればよいですか。
10回を1セットとして、1日3セットが一般的な目安です。全部で5分もかかりません。多ければよいというものではなく、やりすぎると筋肉が疲れて、ゆるめる力が落ちてしまいます。効果を感じられるようになるのは、たいてい4〜6週間続けたあとです。
正しくできているかを確かめる方法はありますか。
正しくできているとき、おなか、おしり、太ももは動きません。体の内側が上へ引き上げられる感じだけがあります。おなかに手を当ててみてください。おなかが硬くなるなら、別の筋肉を使っています。どうしても分からないときは、妊婦健診で助産師に聞いてみてください。骨盤底筋の理学療法を行っている施設もあります。
妊娠中に骨盤底筋体操をしても大丈夫ですか。
経過が順調な妊娠では、一般に安全と考えられていて、尿もれを減らす助けになります。ただし切迫早産と言われている、子宮頸管縫縮術を受けている、前置胎盤がある、安静を指示されている。こうした場合は、始める前に必ず主治医の許可を得てください。
尿もれを防ぐにはどうすればよいですか。
妊娠中と産後に多い、くしゃみや咳のときに漏れるタイプの尿もれには、まず骨盤底筋体操です。続けていると4〜6週間ではっきり変わる方が多くいます。日常生活に支障が出ている、続けても変わらないという場合は、健診で相談してください。産婦人科や泌尿器科で受けられる治療があります。
お産のときはどんな呼吸をしますか。
陣痛のあいだにいちばん役に立つのは、鼻からゆっくり吸って、口から長く吐く呼吸です。日本の両親学級では「ヒッ、ヒッ、フー」というラマーズ法や、長く吐くことを中心にしたソフロロジー式が教えられます。どれを使うにしても共通しているのは、**吐く時間を吸う時間より長くする**ことです。いきむ場面では、その場の助産師と医師の声かけに従ってください。
呼吸法は不安をやわらげますか。
ゆっくり長く吐く呼吸は、体を休ませる側の神経のはたらきを助け、心拍と緊張をやわらげます。妊娠中は、息を止める時間のある方法(4-7-8や箱呼吸)は避けて、止めずに長く吐く方法を選んでください。落ち着く効果をつくっているのは、止めることではなく、ゆっくり吐くことです。不安が日常生活に影響しているときは、産婦人科で相談してください。
この内容は一般的な情報提供を目的としており、医師の診断や助言に代わるものではありません。ご自身と赤ちゃんの健康については、必ずかかりつけの医師・助産師にご相談ください。
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